名工MERZが手がけたSEQUOIA MERZが5/16から世界限定200台で限定販売されます。
誕生秘話
元祖ビスポークと最新テクノロジーの融合
これから説明することは、製品の説明には必要がないのかもしれない。だが、製品の1を語るに10語らなければ、その製品のよさは理解できない。それこそが私たちがSpecializedである所以であり、私たちはGeneralized(凡百の)ブランドではないのだ。いくつもの伏線が複雑に絡み合い、やがてひとつの糸を織りなし、方向性が束ねられていくと、想像以上の化学反応が起きることがある。Sequoia Merzはそんな製品のひとつだ。
すこし鳥の目で見てみよう。ここ十年弱の流れにスーツのオーダーになぞらえたビスポークというカスタムフレームや、軽量な用品による自転車ツーリングの再定義がある。それらはともすると行き過ぎた?大量生産とカーボンフレームへのカウンターカルチャーでもあるのだが、一方で、スペシャライズドは高価で入手困難なカスタム品を、いかにより多くのライダーへ届けるかということにこだわってきた。
1つ目の伏線はこうだ。少しでもスペシャライズドに興味がある人なら、世界初量産型マウンテンバイクStumpjumperを1981年に販売したことはご存知だろう。世の中で、あるいはマウンテンバイクの世界で「世界初」の枕詞はわりと頻繁に時として軽々しく使われるが、そこにわざわざ”量産型”を付ける製品やブランドはあまりない。しかし、この量産型というフレーズこそスペシャライズドの真骨頂であり、創業者マイク・シンヤードの哲学が込められていると言っても過言ではない。
そして、時を同じくしてAllez、Allez Track、そしてSequoiaという3種類のロードバイクがリリースされたことを知る人は少ないだろう。 いずれも、設計は当時から北カリフォルニアでハンドメイドフレームを製作、現在もNAHBS(北アメリカ・ハンドメイドバイク博覧会)に出展しているティム・ニーナンが設計を手がけ、生産は競輪用フレームで世界的に評価を得ていた今野義氏率いる日本の3連勝が担当したものであった。これらは最先端の設計によるバイクをより多くのライダーへ届けたいというマイク・シンヤードの思いから実現した製品であり、その哲学と製品名は現在も脈々と受け継がれている。
Stumpjumperもティム・ニーナンが設計を手がけたが、その後、マイク・シンヤードはオレゴン州ポートランド(そう!ビスポーク、そして現代アウトドアの聖地)でひとりの機械工、フレームビルダーのジム・メルツと出会う。当時から自転車スポーツが盛んだったポートランド最初のハンドメイドビルダーと呼ばれ、’70年代にバイク製作に乗り出し、パナマ運河まで当時の妻と自転車の旅に出かけたこともある。(これも余談だが、2年ほど前に彼の息子は父親と同じルートでツーリングに出かけ、ニンバスタイヤのテストに参加している)
メルツはSequoia中興の祖であり、いち製品に限らず初期のエンジニアリング水準を大きく引き上げることに貢献した。初代Stumpjumperを見るなり、マイクに「私ならもっとよいものが出来る」と言ってのけ、ジオメトリーからチュービングまでスペシャライズドのバイクすべてを変え、もちろんSequoiaも大幅に改良した。オレゴンから北カリフォルニアへ移り、’82年からおよそ10年フルタイムで働いた後は、マスター・フレームデザイナー・ビルダーとしてスペシャライズドに籍を置き、現在はモーガンヒル本社からクルマで2時間ほどのビッグサーに住んでいる。
カーボンパイプとアルミラグの接着フレームAllez Epic Carbon、Epic Carbon、デュポンとのコラボから生まれた3本スポークコンポジットホイール、超軽量アルミフレームの先駆けM2メタルマトリックス、ダウンヒルバイクのDemo、さらにSequoiaの系譜を継ぐRoubaix、といった製品史上に残るエポックメイキングな製品、これらすべてはメルツの手によるものだ。その手柄について、後年「会社は私やその他のエンジニアやデザイナーが夢中になっているプロジェクトに時間と資金を投入してくれました」と述懐している。
これが2つ目の伏線。
以来、Sequoiaは製品史上から姿を消しては再登場を繰り返す。当初よりSequoiaはツーリングバイクとして設計されたが、Roubaixの登場によりその存在は少し影をひそめていたものの、 Roubaixが運動性能の追求に方向性を定めたことで復権、こんにちのバイクパッキングブーム、アドベンチャーライドにより再び陽の目をみることになる。このバイクパッキングブームやクロモリ回帰路線をスペシャライズドに導入した立役者が、エリック・ノーランというスウェーデン出身のデザイナーであり、もうひとつのツーリングバイクであるAWOLを企画した張本人である。現在のSequoiaはケビン・フランクスというプロダクト・マネージャーが立ち上げたもので、かつては『BIKE MAGAZINE』というマウンテンバイク雑誌に籍を置き、叙情的な写真のディレクションやブランドヒストリーに長じ、アウトドアやファッションにも詳しい人物である。そのフランクスと同じチームにいたノーランは、アウトドアブランドのPOLeRとのコラボによるAWOLの限定モデルを成功に導いた。その後、フランクスはレーシングチーム部門へ異動、ノーランは上級デザイナーとなる。つまり、現行Sequoiaはフランクスが製品企画の礎を築き、そのエッセンスをノーランが引き継いでいる。
これが3つ目の伏線。
10を語ってようやく製品にたどりつけるのがスペシャライズド流。しかし、ストーリーはあくまでストーリーであって、製品そのものではない。私たちの創業理念には「最新技術を生かしパフォーマンス向上をもたらす製品を求めるライダーに焦点を絞る」とあるが、Sequoiaもまた然り。単なる懐古趣味ではなく、あくまで今求められる用途で、また、機能を必要とするライダーのニーズを満たす製品がSequoiaだ。
フレーム本体の素材はオリジナルのクロモリで、チェーンステーにはステンレスを採用。フォークは専用のカーボン製を用いる。リアハブは142mm幅のスルーアクスル固定でディスクブレーキの恩恵を最大限に生かすことが可能だ。さらに、前後パニアラック、フェンダーマウントを標準で装備するほか、ケーブルはダウンチューブの下に外装され、メンテナンスを容易にしている。
また、各部に専用設計のパーツを採用。ハンドルバー、ホイール、タイヤはSequoia専用品だ。ハンドルはステム固定部とフラット部に15mmの落差があり、アップライトな姿勢をとりやすい。ソートゥースタイヤはノコギリのようなパターンで舗装から林道までオールラウンドに走ることが可能であり、標準のクルーゼロホイールを使ってチューブレス化も可能。ストーリーのみならず、スペックを聞いただけでも早く乗りたくなる。走りの本気度がひしひしと伝わってくる。なお、このMerzエディションは、設計者のメルツ、デザイナーのノーランのサインが入った世界で200台だけの限定品。ストーリーに酔うもよし、走りに徹するもよし。しかし、同じ仕様は2度とリリースされないことを肝に命じておきたいところだ。
誕生秘話をムフムフ見ているとCX持っているのに欲しくなってしまう一台です。
※完売終了致しました。