暑い。午後2時。もっとも気温の高い時間帯にシニアエリート(23歳以上)のスタートとなる。しかも8周。長いから見ている方もツライが、選手たちはもっとキツイはずだ。
シニアエリートの見物は、凱旋帰国となる山本幸平である。昨年は2位の竹谷賢二に対して7分以上もの大差を付けて圧勝している。果たしてどこまで強くなっているのか。言ってしまえば、「自分以外全員ラップアウト」なる快挙を成し遂げて欲しいとも思うし、本人だって意識していないはずもない。
やはりスタートから飛び出したのは幸平。前を通過する瞬間、あまりの気迫とスピードに鳥肌が立つ。おそらく会場にいた全員が同様だったに違いない。
1周目前半のループを終えてバックストレートに最初に現れたのはこの3人。幸平を意識し、彼をマークするように後を追うのは、武井きょうすけ、平野星矢。
ちなみにこのレースは大江良憲のフィードをしながら。その大江くんはどうした?
来た! 20位ぐらいか。ここ1ヶ月、重いギヤを踏みまくって長距離を走り込んだとはいうが、10位代前半ぐらい(あわよくば一桁順位)が彼の目標となっているはずだ。しかし結果は-3ラップの18位でレースを終えることになってしまった。
そして超ドライ&高温&強い日差しとなったため、多くの選手がトラブルに見回られることとなる。武井は2周目以降にペースを上げられず、3周目にはガクンとダウン。先頭争いから大きく遅れることとなる。
超高速になった路面は機材にも多大なる影響を及ぼし、星矢は度重なるパンクに見回られる。なんとホイール交換を3回。それでも集中力を切らさず、再スタートのたびに勢いよく飛び出して行き、幸平と1〜2分程度差をキープし続ける。シニアの年齢になって身体つきもガッチリとしたが、タフな精神力も身に付けてきているようだ。
レース中盤、早くも幸平、星矢というワンツーという盤石の体制を確立したブリヂストン・アンカー。そこで俄然面白くなったのが3位争いだ。幸平と同様、今期日本の初レースとなる辻浦圭一が上がってくる。昨年の全日本チャンプである幸平はゼッケン1だが、彼はポイントを持たないためエリート最後尾のゼッケン58。つまり58位スタートから上がってきたのだ。
辻浦と激烈な3位争いを演じたのは、高校生の時からすでに20年近くトップエリートとして走っている松本駿。王滝SDAなど、4時間以上のロングレースでは幾度となく勝利を手にしている彼も、全日本では表彰台一歩手前にとどまっていた。しかしこの日の彼はいつもと違う。6月にあったJ2木島平での優勝の勢いをそのままに、6周目で辻浦を引き離して7周目に突入する。
表彰台の一角が確実視されていた山本和弘は、途中から身体が動かずに苦しむ。ペースを上げられないままズルズルと順位を落とし、7周目上りではついにペダルを踏めなくなる。腰痛が爆発して、脚を上げることができなくなってしまったようだ。キャノンデール・マキシスのチームスタッフが心配そうに見守るが、機材や身体に触れることはルール上NG。ハードなトレーニングは身体を強くもするが、ほんのわずかでも度を過ぎるとトラブルを誘発しかねない。トップアスリートはそのギリギリを追求しなくてはならないのだ。
最終周回の幸平。もっと後続との差を広げたい、という彼の気持ちがこのときの走りでも見受けられる。脚を止めることなく、最後までキッチリと激上りはダンシングでクリア。レース後、暑さが本当に苦しかった、と言っていたが、勝負が決してなお手を抜かない走りは、勝利への執念、速く走りたいという欲望が誰よりも強いという証でもある。
一時は、ブリヂストン・アンカーが表彰台を独占するかとも思われたが、最後は暑さでヘロヘロになりながらも松本駿がゴールまで走り切って3位を確保。星矢は昨年のU23優勝に続いて2年連続での表彰台。
シニアエリートのリザルト
一昨年、昨年に引き続き、3年連続で男女の全日本チャンピオンはこの2人。そして再びワールドカップに参戦するため、梨絵ちゃんは20日に、幸平は21日にヨーロッパへと旅立ちます。頑張れ。