マニトウのマーズ・エリートをオーバーホールする。サスペンションというものは、使っているうちにだんだんと動きが悪くなってしまうものだが、このマーズも例に漏れず…といったカンジだ。手で押してみると、フリクションが大きいだけでなくて、沈み込み初期の作動感がぎこちないなぁ。
ということで、インナーチューブを抜いてエアチャンバーをバラす…と、あれれ? ドロドロに汚れたグリスとともに、バネの破片のようなものが出てきたぞ? これは一体? サスペンションには、いわゆるスプリング(反発力を得るための“ポジティブスプリング”)の他に、それをうち消す働きをする“ネガティブスプリング”というのが入っている。ネガティブがない(もしくはバネレートが弱い)と、サスが伸びきったときに「コツンっ」という衝撃が手に伝わったり、沈み込み初期の動きにスムーズさが欠けてしまうのだ。
マーズの場合は、エアピストンの下にネガティブスプリング(コイル式の金属バネ)が入っているのだが、こともあろうかそいつが真ん中から破断してしまっていた。破断面を見ると、縮んだ瞬間に斜めに折れてしまったようなカンジだ。
スモールパーツを手配しようとしたけれど、なんと不可能とのこと。本来、インナーチューブ内にアッシーごと圧入された部品のため、“交換する”という概念がないらしい。
この時点で考えられる手段は3つ。
A:見なかったことにしてそのまま組み付ける。
B:ネガティブスプリングなしにする。
C:代用可能なスプリングを入れてみる。
さすがにウチもプロの自転車屋ですから(“アマチュア”のショップってのがあるわけはないのだが…)、さすがにAは選べない。で、とりあえずBを試すべく、ネガティブなしでエアチャンバーを仮組みする。そして手で押してみると…こりゃヒドイ動きだ。初期の沈み込みがないから1G’が取れないし、ストローク途中でコイルスプリングからエアスプリングに切り替わる(マニトウは併用スプリングなのだ)のが分かってしまう。
Cを実施するには、スプリングを探さないとならない。で、ガラクタ箱をガサガサと引っかき回すと(そもそも店全体がガラクタ箱のようでもあるのだが…)、ロックショックス・サイロXC用のプランジャーユニットを発見。コレに付いているトップアウトスプリングが同じぐらいの大きさじゃないか? 測ってみると、外径が-0.5mm、全長は+3mmといったところ。早速インナーチューブ内にはめ込んでみると、ちょっとアソビがあるけれど、まぁOKといったカンジだ。
早速組み上げて見ると、おおっ! 復活したぜ。やっぱりサスの動きはこうじゃなくちゃね!